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KIKKA GIN JOURNAL

橘花KIKKA GIN 朱華のこと

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朱華のきっかけは2020年の春にイチゴを使ってジン作りたいな〜ってぼんやり考えはじめたのがスタートです。

イチゴは私の好きな果物トップ5に常にランクインし、不動の1,2位スイカ、梨に次ぐ3位を毎年桃と争うぐらい好きです。春になるとイチゴをパクパク食べ「やっぱりイチゴが3位だな」と思い、夏になると桃を食べ「桃が3位だな、これは二度と覆らないな」と確信してみたり。毎年こんな茶番を脳内で繰り広げるくらいには好きな果物なのです。

そんなイチゴなのですが、たまたま行った明日香村の農産物直売所であすかルビーを買い、食べながら奈良県のイチゴの歴史を調べていると面白い事が色々わかってきたのです。

  • • 当時東洋一の試験場と呼ばれていた農業研究所が奈良県に存在した。
  • • そこでイチゴの研究が盛んに行われていた。
  • • 奈良参りと言われ他県から視察や講演依頼が殺到していた。
  • • そして全国トップクラスの生産量を誇っていた。

私は大阪で生まれ和歌山で育ったのですが、奈良県ってイチゴよく作ってるよなって認識はありました。”あすかルビー”や”古都華”などのオリジナル品種の事は知っていましたし、食べた事もあったので。しかし、奈良イチゴ史がここまで深いものだとは知りませんでした。

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1963年の大整備で奈良県農業研究開発センターは東洋一の試験場と呼ばれる規模の研究施設となり、イチゴの品種や栽培方法の研究が盛んに行われていたそうです。
ハウス栽培の導入や収穫時期を早める作型の開発が進められ、春の果物だったイチゴが3月、2月と収穫時期を早める事が可能になる。
そしてついに12月中の収穫が可能になり、産地では「年内にイチゴを収穫してハワイに行こう!」や「イチゴで儲かったから大学に進学できた」「イチゴ御殿」というほどの高収入が得られ、このため県外からの視察や技術講習の依頼が殺到し、奈良に学ぶ姿は「奈良参り」といわれたそうな。

しかし、1973年のオイルショックで燃料・資材の価格高騰に反しイチゴの販売価格が伸び悩み、メイン品種の”宝交早生”の対する病気が蔓延。
さらに技術流出により”宝交早生”の全国的な普及もあり地域間競争が激化。その後も”宝交早生”の品質面でも日持ちの悪さ・長距離輸送に適さない等の問題を抱えていたところに、”とよのか””女峰”等の日持ちが良く長距離輸送に適した品種が開発され、奈良県でも次第に”とよのか”の生産にシフトしていったが、栽培の難しさや病気の多発により生産者に多大な労力の負担を強いることになり、次第にイチゴ栽培を放棄する生産者が増えていった。
三ちゃん(爺ちゃん、婆ちゃん、母ちゃん)の労働力を頼ったスタイルでのイチゴ作の終わりを迎えることになる。その後、奈良県独自の品種”あすかルビー”や”古都華”なので誕生で近畿随一のイチゴ産地になる。

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この様なイチゴの歴史があり、産地も近くにあるって事でイチゴのジンの製造に取り掛かったのが2021年2月。
まずは生産者探しから。”あすかルビー”を使いたかったので短絡的に明日香村で探す事に。
先の農産物直売所に尋ねてみるとあっさり生産者が見つかり一安心。
生産者が見つかれば目標生産数とレシピ開発。とりあえず今年は2,000リットルを目標にレシピ開発をし、生産者にイチゴの予想購入量を伝え、収穫時期等の兼ね合いで蒸溜予定日と目標販売時期を設定。
3-5月は毎週の様に明日香村にイチゴを受け取りに行き、仕込み・蒸溜の繰り返し。最終的に蒸溜回数は約20回にもなり、その間に何度もレシピの微調整・蒸溜方法の工夫を重ねました。約10回分の蒸留液をブレンド、2Batch分が今年の朱華になりました。

そして、その間にもボトルを含めたパッケージの打ち合わせ。ボトルはイチゴをイメージした特殊インクを製作していただく所から始まったのですが、これが予想以上に難航。どうもインク業界で赤色系は難しいらしく数回のリテイクをお願いする事になり、最終的にこれ以上の事はもう出来ないと言われて出来たのが、今回のボトルです。

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綿密に計画されたスケジューリングと思いきや、私の大雑把な性格が災いし当初の発売目標時期から遅れに遅れる事2ヶ月。
7月上旬というスーパーのフルーツコーナーもビワも通り過ぎてスイカやモモが並ぶ頃になってしまいました。

こんな感じで橘花KIKKA GIN 朱華が誕生しました。イチゴの事ばかり考えていた3ヶ月間なので随分イチゴに詳しくなりました。イチゴの粒々はタネじゃないとか、イチゴは果物じゃなく野菜に分類されたりだとか。そんな時間を過ごしてきましたが、一旦はイチゴから離れてまた栽培時期になったら朱華の製造を開始しようと思います。

〜朱華とは?〜

今回の商品に橘花KIKKA GIN 朱華と名付けたのですが、「朱華(ハネズ)」とは日本の伝統色で万葉集にもその名が見られる由緒ある色だそうです。朱華色とは黄色がかった薄い赤色の事で、天武天皇や持統天皇の頃には親王の色とされ、平安時代には禁色にもなっていたほどです。ちなみに朱華色の染色は退色しやすかったそうで、万葉集にも「移ろいやすい心」にかけて詠まれた歌があります。

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