流転のイメージはズバリ「森」。自分は奈良県生まれではなく、隣の和歌山育ちなのですが、隣人から見た奈良県のイメージが森でした。（和歌山も似たようなものですが、こちらには海があります。）柑橘、フルーツと今まであまりジンっぽくないジンをつくってきたと思っています。ですので今回満を持してジンっぽいジンをつくってみました。6年目にしてやっとジュニパーベリーにしっかり向き合って、どんな加工方法が良いのか試してみました。何パターンか試してみて少し割れ目を入れる方法がいいかなと思えたのですが、その少しの塩梅が難しくてまだまだ模索中です。

実は今回の流転にはモデルになったジンがあります。2021年のOSAKA COCKTAIL PARTY2021で会場限定で「濁りジン」として販売していた橘花KIKKA GIN OCPがモデルです。当時、会場限定ジンのオファーを頂いた時に、キハダの実とヒノキを使ったウッディな仕上がりのジンを今後作りたいなと考えていたので、良いタイミングで試せるな〜って感じでOCPを作ったのです。そこから３年間は特に試作することもなく、ぼんやりと頭の中でレシピを構築していました。

そして2024年の1月ごろからビンメーカーさんと緑インクの試作を始めましたが、「緑は一色しかない。サンプルを作っても色の調整は不可です。それでもサンプル作りますか？」と聞かされました。サンプルを作るのにも費用がかかるのに作ったところで調整が無理なら作る意味あるのかな〜って思いながらもサンプルビンを作ってもらいました。
出来上がったビンを見て、最初は望んだ濃い緑色より薄い色だったので残念だなと感じたのですが、そこからインスピレーションが湧き、香りのイメージが荘厳な森から新緑の若葉のイメージへと変わっていきました。そうしてアクセントになるボタニカルも決まっていきましたし、「流転」というタイトルも決まりました。

”流転〟
大和蒸溜所のコンセプトに「奈良を表現する」があり、橘花・朱華と様々な方向から奈良を表現してきたつもりです。今回は森。特に吉野地方。吉野地方が日本林業発祥の地と言われていることからそういった歴史を盛り込んでいこうと考えました。現在は緑に溢れている森林も、少し昔はほとんがはげ山だったみたいです。植える・育てる・切るのサイクルが確立されたことで今の豊かな森林が存在しているようです。

とりあえず今回の流転で自分の中で考えていた橘花3部作が無事完結した思いです。今後のことはまだ考えていませんが、大体映画のシリーズならここからスピンオフが生まれたりするので、そんな感じで今後も進めていければと考えております故、今後も変わらず橘花ジンを暖かく見守っていただければと思います。